1125th
太宰府天満宮 仮殿のイメージ

〈仮殿について〉

天神さまと
私たちをつなぐ御帳

御帳(みとばり)、几帳(きちょう)の
デザインを担当した
ファッションブランド
「Mame Kurogouchi」 黒河内真衣子氏のお話

仮殿には、美しい御帳(みとばり)と几帳(きちょう)が奉納されました。テキスタイルからものづくりを行うファッションデザイナー・黒河内真衣子氏に、制作にあたって考えられたことを伺いました。

御帳・几帳のイメージ 御帳・几帳のイメージ

表にも裏にも柄がある理由

ここ太宰府天満宮の景色の中に溶け込むもの、参拝の方が一年中いついらしても、朧げで美しいものを見たと記憶に残るものを制作いたしました。几帳は境内に息づく草花や西高辻󠄀宮司が幼少期にご覧になった景色を柄のモチーフとしていますが、明らかな風景というより、多様な色の糸のグラデーションによって、春には梅の花が咲く様子や若葉の芽吹き、秋には黄昏のような夕焼けの色のように、ご参拝の方々それぞれが、その季節折々の空気感をイメージできるように表現しました。

本来、布には表裏があります。しかし今回の御帳と几帳には表裏がありません。それは、私たち参拝者から見える面、天神さまから見える面のいずれも大切なものだと考えたからです。奉納された今では、私たちに天神さまがご覧になる面を見ることは叶いませんが。

御帳や几帳が、天神さまがいらっしゃる場所と私たちが祈る場所を、薄いヴェールによってゆるやかに繋ぐものであれたらいいなと思います。

御帳・几帳のイメージ 御帳・几帳のイメージ

古の技術と今の技術と

几帳の制作にあたり、糸を、太宰府天満宮の樟や梅をはじめ、紫根などの貴重な植物から古代染色の技法で染めるところから始めました。しかし長い歴史に亘って各時代の文物が奉納されてきた場所だからこそ、現代の技法も取り入れたいと考えました。そこでオーロラ箔の糸や現代のジャカード織機を用いました。夜の闇でもゆらゆらとたゆたうような光を生んでいるのはオーロラ箔です。

今回、糸を染める段階、布を織る段階で、ふだんなかなか使わない技法にチャレンジしました。様々な人の手を経て一つのクリエイションに到達するのは、自分自身の仕事の核として大切にしていることです。様々な人の思いが集まって成り立つ、太宰府天満宮という場所と通じるものがありますね。

御帳・几帳のイメージ 御帳・几帳のイメージ

時間を経て見える景色

御帳や几帳は、時間を経て変化していくことでしょう。日の光で退色していくかもしれません。風に吹かれるうちに、古代染色の糸と現代の糸は異なる変化を見せるかもしれません。私は、布に使った人の癖や時間軸が記憶されていく様子が、美しくてとても好きです。この御帳と几帳が、仮殿で過ごす3年間でどんな姿になるのか、いまから楽しみにしています。

御帳・几帳のイメージ
黒河内真衣子

Mame Kurogouchi

マメ クロゴウチはデザイナー 黒河内真衣子により2010年に設立されたウィメンズウェアブランド。デザイナー自身の経験や記憶に、伝統と自然、職人技術と最新のテクノロジーを複雑に織り交ぜて作り上げられるコレクションを展開する。私小説的とも言えるマメ クロゴウチのクリエイションはタイムレスなデザインを上質な素材、オリジナルの生地や柄、美しい曲線を描くユニークなシルエットで都会的かつ現代的に表現し、現代における女性らしさと、女性であることへの賞賛を力強く体現する。

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